悲劇の貴公子

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トップスターのプロデュースというものは、本当に細部まで気を使う必要があると思う。劇団が選択を間違えば、どんなに実力があり、本来なら伝説になるはずだったスターも、伝説の序盤で幕を下ろさざるを得ない状況に追い込まれてしまうのだ。


数年前、劇団がスターとしての実力を全て兼ね備えたジェンヌを、おそらく何も考えないでとりあえず真ん中に置いたであろうと思われるケースを目撃した。


雪組の貴公子、音月 桂である。


彼女は甘いマスクと確かな実力を持ち、早くから将来を嘱望されていた。下級生当時の彼女は紛れもなく路線であり、まさしく雪の御曹司であったと記憶している。


音月は本当に実力者であり、特にその歌声・演技力は卓越していた。彼女のジェンヌとしての将来は明るく、水夏希が雪組を率いるようになってからは、三番手となって着々とキャリアを積み、ゆくゆくは二番手となって色々な美味しい役どころを与えられるはずであった。


しかし劇団は当時雪組二番手であった彩吹 真央に真ん中を任せるのは心もとないと考えたのか、あるいは音月を一刻も早くトップにしたかったのか、突如二番手の彩吹を退団させてしまった。


こうして音月は、多くの彩吹ファンが無念の悲しみに暮れる微妙な空気の中しかもほぼ二番手経験ナシでのトップ就任となった。

そして、大劇場お披露目公演で、世にも奇妙な人事が音月を襲うことになる。

当時96期問題の渦中にあった、夢華 あみヒロインのWキャストとして大抜擢したのである。この異例であり常軌を逸した人事は当然ファンの大きな反感を呼び、結局夢華は途中で降板することになった。

(若干話が逸れるが、夢華に関しては抜擢時期及び圧倒的経験不足からくる未熟さこそあるものの、実力自体は確かにあったことは事実だ。Wキャスト両方の舞台を観劇したが、正直なところ、私個人としては彼女のジュリエットに軍配を上げる。この抜擢さえなければ、彼女はいずれどこかで娘役トップになりえただろう。

もっとも、彼女がヒロインとして本当に音月に合っていたかと言われると疑問もある。いずれにしても大劇場で主演を張るのは早すぎるし、ましてや96期問題が加熱する最中での大抜擢など論外である。


さらに不幸なことに、音月は演目にも恵まれなかった。与えられた演目は、ほぼどれもが客の呼べない作品ばかり(最悪の作品含む)。

そうして、音月は、約2年という短い在任期間を終え、退団していった。彼女の実力とこれまでの活躍を思うと、あまりにも短すぎると言えよう(私の直接の知り合いに音月ファンがいないので生の意見を聞いたことがないが、もし私が彼女のファンだったら、やるせないことこの上ないだろう)。


私は、音月 桂というジェンヌについては、歯車が狂いさえしなければ、今この100周年において、あの柚希 礼音に勝るとも劣らないトップスターとして君臨しえたはずであると思っている。



劇団の判断には妥当だと思えるものも多い。事実、数多くのジェンヌ中から音月のようなスター候補を目をつけ、抜擢したのは劇団である。しかし、スターを育てるにあたって与えるポジションには然るべき順序があるはずであるし(男役にとって二番手時代は貴重であると考える)、また客商売である以上、常にファンの心理は大切にしなければいけない。そして、ミュージカルは総合芸術なのだ。トップスター1人が作り上げるものではない。共演者もそうだが、脚本・演出は何より重要である。

劇団自らが招いた様々なマイナス要因が、100年後に名を残すはずの大スターを潰すこともあるということだ。

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コメント

  1. SECRET: 0
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    こんにちは(゚▽゚)/音月桂ちゃんのファンです。
    あなたがこのブログを書いてくれて、嬉しいです。
    実は、桂ちゃんが退団してからドラマを見て、大ファンになりました。
    桂ちゃんのトップ生活が本当にかわいそうで…
    まず、2番手をやらないのは最悪ですよね。
    あと、ジュリエットの選抜は桂ちゃんと夢華あみちゃんの人生を狂わせた人事だと思います。
    作品に関しては…
    ・ロミオとジュリエット→元から好きな作品で、歌もかなりうまいので最高☆
    ・仮面の男…不評だと聞いたから見てない
    ・ロイヤルストレートフラッシュ
    …このショーが一番好き。仮面の男があれだったからな…
    ・ドンカルロス…普通。
    ・シャイニングリズム…普通によかった。
    ・仁…退団公演でやっと良い作品に会えたのね☆ってくらいよかった。
    ・Gold Spark…楽しいショーだった。
    こうして見ると、ショーはそんなに駄作じゃなかっただけに(あくまで主観)残念です。
    あなたはどう思いますか?
    結局、劇団は桂ちゃんをどうしたかったんでしょう?
    ものすごく個人的な意見ですが…もし桂ちゃんがあの時退団してなかったら、
    私は宝塚のファンになってなかった。だから、今凄く複雑な気持ちです。

  2. SECRET: 0
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    >チョコレートさん
    はじめまして。コメントありがとうございます。
    現在の音月さんを見てファンになられたのですね。真に魅力的なジェンヌは退団後もファンを宝塚に呼び込むものです…
    音月さんの代表作は、トップ就任後では間違いなく『ロミオとジュリエット』でしょう。
    他の作品がたいしたことないということを抜きにしても、『ロミジュリ』は彼女の魅力を最大限に生かせる作品であったと思います。個人的には今まで宝塚で上演した『ロミジュリ』の中で一番好きです。まっつも上手いですし。
    仮面の男は大劇場公演でファンの反感を買いましたが、DVD等の映像に残っているものは東京公演バージョンなので問題のあるシーンは変更されています。内容はともかくとして、この作品は影を使った表現手法は面白いと思いました。ほんとそれだけですが。
    ショーの方はオタク臭強いですが内容は結構良かったですね。特に主題歌が好きです。
    ドンカルロスは地味ですが内容的には悪くないと思います。「心から心へ」も素敵です。
    おっしゃる通りJINはなかなか好評でしたね。演出の斎藤先生はショーは当たり外れありますが芝居は基本良いものを作ります。
    それと、私は未見なのですが、『フットルース』は大変好評だったらしいです。ただこの作品は権利の関係で映像に残ってません。まさに幻の作品ですね。
    音月のトップ時代に関しては、劇団も彼女をトップの大器だと見込み、実際その通りだったものの、売り方を間違えたためにあんなことになってしまったのだと思っています。
    非常に残念ですが、退団後の彼女が充実しているのならそれも結果オーライなのかもしれません。

  3. こうすけ より:

    SECRET: 0
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    東京のお披露目公演では、あの東日本大震災に襲われて、何公演か中止にもなりました。
    本当にお気の毒なのはもちろん東北の方達ですが、あれはキムちゃんにも最悪の出来事でした。スタートから躓いた感が。。。
    96期の主犯格を相手役に押し付けられた上に、あの日本全体が落ち込んだ時期。
    宝塚など、上演したり観劇したりする雰囲気ではありませんでした。
    今更ですが、一言言いたくて書かせて頂きました。